in the room

埋まらない退屈だけを愛しぬけ

月報2022/07

7月の月報です。
長い、長い、長い。

 

漫画「ちはやふる」が、完結した。
主人公が高校に入学し、卒業するまでの3年間を、15年で描いた物語だ。

 

ちょうど自分が高校生の時に、友人が百人一首同好会を立ち上げた。
私も興味があったし、同好会が部に昇格する基準に人数も必要だった。
しかし、当時すでに3つの部活と放送局に所属していたため、加わることはできなかった。

 

それから同窓会の会報を開くたびに、百人一首部はあれよあれよと活躍していく。
後輩に繋ぐなにかをひとりで始めた友人を、今も変わらず、尊敬している。

 

そんな縁もあったし、なにより人生を話す作品は、大好きだ。
途中で、読む機会が途絶えてしまったけれど、絶対に大好きなはずだと確信があった。

 

今回の完結に際し、48時間限定で、1巻から48巻まで電子書籍で読める企画が発表される。

無料。

私はいてもたってもいられなくなり、48時間の休暇宣言をした。

 

眠る時間と洗濯と掃除以外を、使って読みきることに決めたのだ。


もう漫画を50冊購入する余力はなく、あきらめていた。
でも、これなら間に合う。
どうしても、物語の結びを、できるだけ多くの読者と共有したかった。

今しかない。

 

これは2020年から顕著に変わった意識で、この先もなにより優先するだろう感覚だ。

 

3年間を、15年で語り、48時間で受け取る。

いつものとおりの私だと、声をあげて泣く。
そう思って用意したティッシュは、あと2箱足りなかった。

 

ところで、ここ最近では、タイムリープの設定が、自然に使われるように感じる。

私だって、目の前に現れた誰かから「今西暦何年の何月で、ここはどこですか」と聞かれれば、感激しながら答える。

 

しかし、現実で15年を走ってみて、わかったことがある。

そう何度もは、心身が、もたない。
衝撃が、とんでもない。

 

いくつもの印象的なエピソード、美しい光景、何度も唱えたい言葉が、頭のなかに入りきらない。
今もまだ、心は揺れるし、かんたんに泣くし、首の凝りは治らない。

 

そんなときに、私の横で映像作品を横目でみたことのある夫が言う。

 

で、主人公はどっちの男を選んだの、結局。

 

「雑過ぎぃぃ」は喉の奥で飲んだ。
ため息にならないよう大きな呼吸をして、肩をくるりとまわしてから、聞かれたのと同じ乱雑さで返事をする。

 

自分のみているものが、たとえ真横にいたとしても、別の人のそれと全く違うことを忘れるな。
病院で教わった誰かの言葉も思い出す。

 

違うことは、私には面白いことだ。
ただ、それを伝え合おうとする時には、努力が要るし、上手に生きるなら時々は諦めた方が、丸くおさまる。


自分にとって大切なものをみせるなら、それを同じように扱ってもらえる人がいい。

 

歳を取った。
ひとつの作品の素晴らしさをイチからプレゼンする、気力がない。

 

と、ここまで書いて、私はあんなに泣いた漫画から、何を得たのかと猛省する。
好き、が世界をひろげていく。夢中になった何かは、人を、いろいろなところをつれていってくれる。
まだまだ、しがみつかなくちゃ。

 

今月、書くはずだったこと。
修道会に入りたかった母とクリスチャンだったはずの祖母の法名
夏に自宅にいるのはピアノの練習時間だけだった10アンペア生活。
キャンセルを選んだ今年の家族旅行と熱中症とフライトレーダー。
河川ライブカメラとテレビの生放送とラジオのリアルタイム聴取。

 

毎日、毎日、こんなにたくさんの出来事が起きていたのでは、まともでいるのに精一杯だ。
それでも、千年前の人も、たいがい同じように思い悩んでいたのだし、大丈夫にしよう。

 

今は、蝉が、こわいです。
蝉は、いつも、こっちの話を全然きいてくれない。